はじめて打った日
私がはじめてパチンコ屋に入ったのは、24歳の時でした。
当時付き合っていた彼氏との待ち合わせ。電話が鳴り、
「ごめん、遅れる。いま、スロットが出ててさ」
その時の私はパチンコ屋に入ったこともなく、なんとなくのイメージは、悪いおじさんたちが行くところ。まったく私には縁のないところだと思っていました。
恐る恐る入ったパチンコ屋は、薄暗く、騒々しく、煙草くさい。
彼が打っていたのは5円スロットのエヴァでした。
言われるがままに操作すると、すぐに当たります。
ビギナーズラックですね。
私は身近にギャンブルをする人がおらず、この時はじめて「お金になる」ことを知りました。
アニメの台もあるし、すぐに当たるし、しかも儲かるなんて結構楽しいかも?
はじめは本当にそんな単純な、無邪気な感想だったんですね。
彼氏は専門学校生で、私は稼ぎのないアルバイトでした。
デートでパチンコ屋に行くようになりますが、打つのは5円スロットか1円パチンコでした。
二人で打つのは楽しかったですね。
隣同士座って、熱いリーチに一喜一憂して。勝っても負けても、あー楽しかった!で終わっていた気がします。
いつからか一人でも行くようになりました。
数千円の範囲で打っていたのが、当たるまで際限なく打つようになり、
勝ったらもっと増やそうと思って、4円パチンコに。
バイトをすっぽかし、友達との約束をドタキャンし、母親にお金を無心する。
初めて打ってから1年半くらいで、そんな状況に陥りました。
彼氏にもパチンコに行っているのを隠すようになりました。
彼はその時、夢を見つけて、貯金をしようと節約するようになっていました。
ただ遊びで打っていたパチンコはやめて、外食も控えて、バイトを頑張っていました。
私は置いてきぼりにされた気持ちで、彼への執着と、ギャンブルへの依存を深めていきました。
結婚したら幸せになれると思っていました。
私の幸せはすべて彼任せでした。
彼がもっと構ってくれたら、双極性障害じゃなかったら、私はギャンブルしなくてすむのに。
その時は、やめたいではありませんでした。
勝ちたい、でした。
ずっと勝ちさえすれば、何も問題はない。
気持ちよく勝って、趣味としてやっていればいい。
完全にコントロールを失っていることは、認めませんでした。
彼には距離を置かれ、ギャンブルは勝てず。
落ち込んだ時には死にたくなり、腕を切ったり、薬を飲んだりしました。
でも彼が家に来てくれた時や、大勝した時は、めちゃくちゃテンションが上がり、なんて幸せなんだと思います。
もともとの気分障害に加え、ギャンブルと彼への依存で、気持ちの上がり下がりが異常なものになっていました。
彼にフラれる前の出来事です。
お財布は空で、私は少しでもいいからパチンコが打ちたくて。
彼のアパートで「打ちに行こうよ」とごねました。もちろん、彼のお金をあてにして。
俺はいいよ、と言い続けるので「それじゃあ貸して欲しい」と言いました。
彼は三千円貸してくれました。私は近くのパチンコ屋に走りました。
何十分後か、また彼のところに行って、貸して欲しいと頼む私がいました。
「消えてくれよ!」
とお札を投げつけられた時、ショックで震えながら、何てことをしてるんだろうと思いながら、お金を拾ってパチンコ屋に行きました。
パチンコしていれば、嫌なことはすべて忘れられる。
気持ちが楽になる。頭を空っぽにしたい、楽になりたい。
いつでもギャンブルをしていたい。
いつの間にか、そんな風に狂っていました。